「頭が白くとも、おめさんはお兄さん!」


2003年5月 小林喜三郎さんからのお手紙を紹介いたします。

 今、私は福祉ボランティア活動の一つに、一人暮らしのお年寄り宅に昼食弁当をお届けしています。
その時、ある人との出会いから、気持が通じ合うような体験をいたしましたので、そのことについて書かせていただきます。
 ある日、私の宅配担当でない地区に、お弁当を配達することになりました。
その地区担当の、年輩のご婦人が急に都合が悪くなり、私が代行することになりました。
代行で配達する地区は、昨年何回か訪問したこともありますので、さっそくTさん宅へお伺いしました。
「Tさーん、お元気ですか?今日は、私が代わって弁当を持ってきました。とても美味しそうな弁当ですよ。
中味は分からんが、とてもいい匂いがしますので。暖かなうちに食べて下さい」と差し出しました。
すると、「いつも来るばあちゃん、どうしたね?」と尋ねられました。
私は、一瞬考えた末に、「だれだろー?ハートグループのばあちゃんって?
ハートグループには、おねえちゃんはいるけど、ばあちゃんはいねんだろも」と言いました。
Tさんはうなづきながら、「そうだねぇ。こんなザイゴまで弁当を運んでくれるのは、ばあちゃんでは無理だねぇ」と言い、「ところで、おめさん、幾つかね?おもしろい人だねえ。頭が白くとも、おめさんはお兄さんだこて」と言われ、二人で大笑いしました。
それまでのTさんの印象は、口数が少ないというか、どちらかというと少々無愛想な人でしたのに、私の冗談から、昔から知っている友達のような間柄にさせていただいたようで、とても気持ちの良い一日でした。
 そんなことをすっかり忘れかけた翌月。
いつものように年輩のご婦人が、Tさん宅へ弁当配りに行きますと、その年輩のご婦人に対して、Tさんは、「おねえちゃん、ご苦労さん!」と言われたそうです。
年輩のご婦人はとまどって「相手がぼけたのでないか」と黙り込んでいると、「実は、先月、男の人が配達に来られ、これこれこんなことがあった」と説明してくれたそうです。
これで年輩のご婦人は、事情は理解できましたが、まさに狐につままれた心境であったそうです。
そして、Tさんからのメッセージ、「あなたにまた会ってお話がしたいので、今度は二人で来て下さい」と伝えてくれました。
Tさんはさらに、「こん年になって、男の人と会いたいなどと言って、おれ、ぼけたみたい」と頬を赤らめていたと付け加えられました。
「どうしますか?」と言われてもねぇ…。
私がお伺いすること、まだ実現していません。
 私は常にボランティアを通して、相手の人生を大切にして上げたい、そして自分の人生も大事にしたいと思っています。
ただただ、口先だけの評論家ではなく、心して「人も我をも幸せ」を願いながら、自分の出来ることから率先し、実践していきたいと思っております。

これで、小林さんのお便りは終わりです。


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